【BOSS Room】Vol.4 柱 Hashira

更新日:8月8日


 「自分は何を期待され、そして何が出来るのか?」・・・そんな考えはやがて「自分が何をしたいのか?これからはどうありたいのか?」に変わり、アイディアが変わる。産屋敷前代表から話しを頂いてからそれなりに時間を費やし自問自答。いくつかのハードルと同時に将来への夢・希望が湧いてくる。あまり難く考えずに自分が居なくてもクラブ運営や子供たちの活動がスムーズに行きさえすれば自分の役割はそれなりにあると解釈すれば二足も三足も草鞋はそう重くはない。

 色々な絵を描いてみた。実現可能か否か解らないが ”夢があるから強くなる”…そんな言葉を思いながら今まで自分が経験してきたことを足掛かりに、ロヴェスト神戸の近未来から20年後・30年後の未来の姿を想像する。この想像の時間が至福の時間となる。

 2021年9月、結論を出し産屋敷前代表に意思を伝えた。契約書を作成し、諸々詳細を詰め年末に契約書を交わした。クラブ所有のグラウンド・設備、マイクロバス等の車両、スタッフの給与・・・詰めなければならない案件は山ほどあるが、とりあえず2022年1月1日に新生ロヴェスト神戸は船出した。


 株式会社ユーブから運営権を譲受したのは株式会社カサイルという会社で(代表取締役:昌子楓)、事務・会員管理は娘と家内が担当。私は大学勤務があるので平日の授業後や土日の時間があるときに現場のサポートをしながらコーチングの記録、自身の研究用データ収集等を行うと同時にクラブ内の規約・ルールの整備を担当。私は社員ではなくボランティアという立場だが区分はどうあれ、クラブ内に統一したルール(規約)と考え方(指導指針)がありさえすればクラブはいつものように動きそして上積みはできる・・・それが一つ目の決断理由だった。

 ロヴェスト神戸の全てを譲受した立場としたら何より先ず『より良い組織・クラブに発展させていくためにはどうしたら良いか?』を考える。その第1歩は『このクラブが築いてきた歴史を知る』こと。しかも内からの情報だけでなく歴史をも含めた”外から見たロヴェスト”の姿だ。譲受を決めた後、早々に色々な人達から様々な話しを聞き、情報を収集した。良い話は継続事項、良くない話しは改善事項・・・全ての情報は大切な財産だ。そしてそこに自分で見たままのロヴェスト神戸の姿・現実の評価を加味する。

 私において「ロヴェスト神戸という組織において今後重要なことは何か?」と問われたら、その答えを「私がいなくても回転していくクラブの仕組みをどう作るか?」と答える。色々な情報収集の結果、このクラブに明確な”仕組み”と”ルール”の整理さえしておけば自ずとクラブは前に進み、今までの歴史と相俟って化学変化が起きると考えた。積み重ねてきたものを変える必要はない。というより過去には戻れないのだから今から加えていくものこそが新生ロヴェスト神戸の源となるものなのだ。


 「ボスに聞かないとどうなっているのか解らない」「ボスが決めることだから・・・」という話しはよく聞く。良くも悪くも組織の代表が全ての権限を持ち全てを決めるといったケースは決して珍しくない。しかし私が求める姿は「ボスが居ないと解らない」ではなく「ボスがいないからこうしておいた」という組織。そう言う組織にロヴェスト神戸が成長していったとき、ロヴェスト神戸から日本を代表する選手が巣立っていく・・・そんな思いを描いている。

 株式会社として運営をしている以上、利益を求めることは至極当然ではあり、それゆえに最終判断は組織の長たる者が下す・・・これは重要なことであり他のスタッフに責任を転嫁してはいけない。しかし長が下すべきものとその場で決断・解決すべきことが多々あることも事実。これらの区別が難しくもあるが組織の動きの良し悪しは大人が見せるこういったところに見え隠れするのかもしれない。

 グラウンドに立った選手というものはそれまで経験したことのない千差万別の”場面”に遭遇する。都度、自立と自己判断を繰り返し、いつも自己責任の元でプレーをしている。その自立と自己判断の連続が時には失敗となる。だがこの”失敗”が重要で、大切なデータとして蓄積され、次なる新しいアイディアを生み出す源になる。いわゆる”失敗は成功の始まり”だ。考えろ!というコーチングもそこから来る言葉だろう。

 しかし折角子供が下した決断・行動に先駆けて「あれしろこれしろ」と指導者が保護者が子供の失敗を見たくないとばかりに口走る。時として指導者は選手の責任を被るどころか「お前のミスからだ!」と自立と自己判断を繰り返している選手に追い打ちをかけたりもする。失敗しないように教えることが、実は失敗経験不足を招き兼ねない。困ったときの対処方法を覚える”時”がないのである。窮地に弱い選手には育ってほしくない。勿論無からは何も考えは生まれはしないので少しばかりの”先走り”も悪くはない。要はコーチングとティーチングのバランスだ。そう考えると子供をとりまく大人たちの責任は重大だ。子供の自立心・自己判断力を育てる組織は自立心が高くジャストな判断と高い対応力をもった大人が集まる組織でなければならない。幸いにもロヴェスト神戸のスタッフは産屋敷前代表に鍛えられているためか、自己判断と行動が自立している部分が多いと感じる。それがロヴェスト神戸の全てを受けた理由の大きな柱かもしれない。




次回に続く・・・










昌子力


1963.11.07生まれ。島根県出身


2008年、日本サッカー協会(JFA)が公認する指導者の免許制度(日本サッカー協会指導者ライセンス)で最高位の指導者資格である「日本サッカー協会公認S級コーチ」資格を取得。


指導者として36年、これまで3歳~80歳までの男女共、様々なカテゴリーで指導に携わる。​

神戸FCでジュニア世代の育成に携わり、ヴィッセル神戸ではトップチームコーチや下部組織の育成統括責任者を歴任し、育成やトップチームの現場で指導にあたる。

幼児からシニア、そしてプロの指導現場を知る数少ない現役指導者である。


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