【BOSS ROOM】Vol.6 § 雨の日のサッカーは雨の日にしか学べない §

更新日:8月27日


2017年の関西学生1部リーグでの活動を最後に主導権をもってのチーム指導から距離を置き、サッカー協会のトレセン活動・指導者養成活動・種々多種年代のサッカー大会視察・トレーニング視察などを通していろいろなサッカーを観てきた。大学生カテゴリーは延べ20年ほど観てきたことになるが、長くなるとなかなか異年齢のサッカーを観たり感じたりする機会が少なくなる。トレセンの指導を行っていたとはいえ、今では若手指導者が中心。30・40歳代に自チーム指導の合間を縫ってトレセン指導を行っていた時の頻度や濃さに比べたら比ではない。寧ろ指導者の指導を行う機会ばかりが増えた。それはそれで “時は巡る” である。自分が若い頃、先輩指導者にグラウンドで色々と教えてもらったものだったが、気が付けば先輩達はトレセン現場から退いていた。時代には変わるものと変わらないものがあり、変わらなければならないものと変わってはいけないものがある。そう思えば“指導者の熱”“親の関わり”は変わってはいけないものであるような気がする。


 “良い指導者”とは? 自分が憧れる指導者・影響を受けた指導者・意識する指導者・選手時代に出会った指導者・・・自分が指導者をやっていてこうなりたいなと思う指導者はどんなタイプなのだろう? 私はこの40年間自問自答してきた。基準は一体何なのかと?

良い指導者の定義と言われてもなかなか答えは出ないものだが、40年自分が進んできた道筋が自分の思う“良い指導者”への方向だとは思う。しかしそれをも確信では無い。勝たせる指導者か?全国強豪チーム指導者か?プロ選手・代表選手を育てる指導者か?そういう目に見える結果ではなく・・・選手の気持ちに寄り添える指導者か?選手が自発的に”恩師“ と言い添える指導者か?

 ロヴェストによって4種年代・3種年代に関わることが増えた。ロヴェストに子供を預けてくれている保護者が考える“良い指導者”とはどんな指導者だろうかと考える。私が考える良い指導者と合致していればよいが・・・と。だからこそ保護者と話しをしてそのイメージを少しでも擦り合わせ、共有出来たら良いと思う。しかし思うほどそんなに簡単ではない。実際、指導者も保護者も互いの思いを打ち明け語ることは殆どない。どう考えているのか?何を思っているのか?・・・互いに知らないことばかりだ。ましてやその人の生い立ちや性格まで知ることは無い。もっと子育てに寄り添うべきではないか?これも良い指導者の条件ではないのか?と。


 私の信条としては『サッカーを子育てに役立ててほしい』と思っている。これはサッカーが好きな子供にサッカーというスポーツを通して『世の常識・喜怒哀楽のコントロール・人に対するホスピタリティー』を学んでほしいということだ。あえて誤解を恐れずに言うなら “サッカーを思い切りやりなさい” ”何があっても応援するよ“  ”サッカー優先に生活をまわすよ“  ”サッカーのためなら何でも・・・“  ということではない。それはそれで良いのだが、あくまでも人としての成長ありきでのサッカーであって欲しいと思っている。サッカー選手とて人。礼儀作法・ホスピタリティー精神無くしてファンは増えないしファンは付かない。本当に応援してもらえる選手は相手の立ち位置を理解し、相手の心を理解しようとし、理解できる人だ。立派なプロ選手はみなファンの心を掴んで離さない。それは人の痛みを知り、苦しみや悔しさ、嬉しさ、喜びを知り、寄り添い努力出来るからだ。おそらくサッカーやスポーツをやっていれば当たり前のように痛み・苦しみ・悔しさ・嬉しさ・喜びを知る機会はどの子供にもどの親にも巡ってきて、それを感じ、経験出来ているはずだ。しかし大事なのは経験そのものではなく、その時の寄り添い方。どう対応しどう処理するのか?順境には強いが逆境には弱いでは困る。自分が正当で相手が不当と言い切るのは怖い。

 自分基準にならず物差しの精度を上げる・・・そのために非日常やスポーツ、競い合いが必要だ。世の中は理不尽だらけだ。一所懸命(一生懸命)働いているのに給料が下がることなどどこにでもあり得る話しなのだ。これに耐えて次なる野望を持ち、自分の環境を順境に変えていく大人にならなければならないのだ。この不屈の闘志、心打たれて打ち拉がれても立ち上がる強さ、これは今、身につけておかなければならない。土台作りは今なのだ。


 これは、【ボールをコントロール能力(操作能力)は人間の神経系統(こと細やかに手足体の動きを司る部位)が成人の80~90%出来上がると言われる6~12/13歳までに身につさせることが良い】というのと同意なのだ。体を動かす能力と同時に心をコントロールし、逆境を順境に変える能力は逆境下でしか学べない。雨の日のサッカーは雨の日にしか学べないのと同じだ。



次号に続く




昌子力

1963.11.07生まれ。島根県出身


2008年、日本サッカー協会(JFA)が公認する指導者の免許制度(日本サッカー協会指導者ライセンス)で最高位の指導者資格である「日本サッカー協会公認S級コーチ」資格を取得。

指導者として36年、これまで3歳~80歳までの男女共、様々なカテゴリーで指導に携わる。​

神戸FCでジュニア世代の育成に携わり、ヴィッセル神戸ではトップチームコーチや下部組織の育成統括責任者を歴任し、育成やトップチームの現場で指導にあたる。

幼児からシニア、そしてプロの指導現場を知る数少ない現役指導者である。


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